相続登記の義務化─いつまで?罰則は?わかりやすく解説【2025年保存版】

相続登記

「相続登記の申請義務化」が2024年4月から始まりました。
これまで「登記しなくても特に罰則がなかった」時代が長く続いていましたが、ついに国が本気で「放置された名義」をなくそうと動き出しています。──参照:法務省|相続登記の申請義務化特設ページ

「親が亡くなったまま、名義変更をしていない土地がある」
「遺された不動産について相続人の間で意見が合わず、遺産分割協議がまとまらない」
──もし心当たりがあるなら、早めの確認が必要です。

この記事では、

  • 相続登記をいつまでにしなければならないのか
  • 罰則や例外はどうなっているのか
  • 今から何をしておけばいいのか

を、専門用語をできるだけ避けて、わかりやすくまとめました。
2025年以降に相続が発生した方、まだ登記をしていない方、どちらにも役立つ内容です。

目次

相続登記の義務化とは?いつから始まったのか

「相続登記」とは、亡くなった方の不動産(家・土地など)を、相続人の名義に変える手続きのことです。
これまでは義務ではなく、「やってもやらなくても罰則なし」という状態が続いていました。

故人名義のまま何十年も放置された結果、今となっては相続人が多すぎて誰が所有者か分からない、といった問題が全国で増加。特に地方では、所有者不明土地が社会問題となりました。

法務省によると、所有者が分からない土地の面積は九州本島の大きさに匹敵するといわれています。

全国のうち所有者不明土地は九州本島の面積を超えるとされています。今後高齢化社会の進展に伴い、死亡者数の増加が予想されることからますます深刻化するおそれがあり、その解決は喫緊の課題とされています。

法務局|民法・不動産登記法の一部改正と相続土地国庫帰属法について


この深刻な事態を受け、2024年4月1日から「相続登記の申請義務化」が正式に施行されました。
つまり今後は、「相続した不動産の名義変更を放置することができない」時代になったのです。

💡 ポイント

義務化後に相続が発生した場合、相続人は相続開始を知った日から3年以内に登記を完了させる必要があります。

なぜ今、義務化が必要だったのか

長年のあいだ、相続登記は「やってもやらなくても罰則のない任意の手続き」でした。
しかし、世代を超えて土地を引き継ぐなかで、登記をしないまま放置されるケースが増えました。

土地の所有者がわからないと──
・公共事業や再開発が進まない
・隣接地の境界トラブルが解決できない
・相続人同士の争いが長期化する

といった弊害が出てきます。
こうした背景から、登記を「個人の自由」ではなく「社会のルール」として整備する方向に転換されたのです。

義務化はすぐに罰則があるわけではないが…

2025年現在、実際に「過料(罰金のようなもの)」が課された事例はまだ多くありません。
ですが、今後の運用次第では「期限を過ぎたら行政が調査し、警告→過料」という流れが一般化していくと見られています。最近ではいわゆる「お尋ね文書」が届いた、と相談にいらっしゃるかたも少しずつ増えてきました。

いずれにせよ、
「うちは大丈夫」「まだ先の話」
と放置することが、一番リスクが高い行動であることは確かです。

いつまでに登記しなければならない?

相続登記の義務化では、
「いつまでに登記しないといけないのか?」という期限が明確に定められました。
それが──相続開始を知った日から3年以内です。

期限の起算点は「相続開始を知った日」

ここで注意したいのは、「亡くなった日」ではなく「相続が発生したことを知った日」からカウントされる点です。

たとえば、

  • 離れて暮らしていた親が亡くなり、数か月後に知った場合 → 知った日から3年以内
  • 配偶者が亡くなった場合 → 原則、死亡日から3年以内

となります。
つまり、「知らなかった」期間が考慮される仕組みになっています。

💡 補足

相続開始の時点で相続人が複数いる場合、誰か一人でも登記を完了すれば義務は果たしたことになります。
ただし、他の相続人が納得していない場合は「遺産分割協議」が必要になります。

過去(2024年より前)に発生した相続はどうなる?

「うちはもう10年前に親が亡くなっていて、登記していないけれど大丈夫?」
──そんな声も多いです。

この場合、経過措置として次のように扱われます。

手続き期限を確認しよう
  • 2024年4月1日より前に相続が発生している場合、施行日(2024年4月1日)から3年以内に登記を完了する必要があります。
  • つまり、2027年3月31日までが猶予期間です。

したがって、すでに親の名義のままになっている土地や家がある場合、
「放置しても罰則なし」という時代は終わった、という認識が必要です。

すぐに分割協議ができない場合は「相続人申告登記」を

登記の義務化で新たに導入されたのが、「相続人申告登記」という制度です。
これは、「まだ遺産分割が終わっていない」「誰が登記するか決まっていない」ときに、とりあえず「相続が発生したこと」を申告しておくための制度です。

法務局に「自分が相続人であることを申告します」と届け出ることで、3年以内に登記をしていなくても過料の対象にはなりません。

💬 相続人申告登記のメリット
  • 申告するだけで義務違反を免れる
  • 無料でできる
  • 書類も比較的少なく、本人申請が可能

ただし、この申告はあくまで「一時的な回避策」です。
いずれ正式な登記をする必要がある点は変わりません。
期限内に「とりあえず申告」しておく、という使い方が現実的です。

登記を先送りにしてはいけない理由

「今は住んでいない土地だから」「誰も使っていない実家だから」といって放置してしまうと、後々思いがけないトラブルを招くことがあります。

登記を先送りにすることによるトラブルの例
  • 他の相続人が亡くなって相続関係が複雑化
  • 固定資産税の納税通知が届かなくなる
  • 売却や解体ができなくなる
  • 相続登記に必要な戸籍が取れなくなる

相続登記は、「今やるか、もっと大変になってからやるか」の違いしかありません。
義務化をきっかけに、いま手をつけておくのが賢明です。

義務化の対象になるのはどんな土地・建物?

結論からいえば、相続によって名義が変わる不動産は、ほぼすべてが義務化の対象です。
家でも土地でも、名義人が亡くなっている場合には登記が必要と考えておきましょう。

対象となる不動産の範囲

相続登記の義務化は、「所有権を持つ不動産すべて」に及びます。
つまり、次のようなケースも含まれます。

義務化の対象になる例
  • 親が所有していた実家の土地や建物
  • 空き家や、すでに誰も住んでいない家
  • 駐車場や農地、山林などの土地
  • 兄弟や親族と共有名義になっている不動産

都市部のマンションでも、地方の山林でも、「名義が故人のまま」であれば対象になります。
「小さな土地だから」「固定資産税の通知が来ていないから」といって放置しておくと、
のちに過料の対象になる可能性もあります。

相続登記の義務化は、「所有権を持つ不動産すべて」

被相続人が所有権を持つ不動産すべてについて、相続登記が必要です。
つまり、次のようなケースも含まれます。

これら全てが義務化の対象
  • 親が所有していた実家の土地や建物
  • 空き家や、すでに誰も住んでいない家
  • 駐車場や農地、山林などの土地
  • 被相続人の兄弟や親族と共有名義になっている不動産

都市部のマンションでも、地方の山林でも、「名義が故人のまま」であれば対象になります。
「小さな土地だから」「固定資産税の通知が来ていないから」といって放置しておくと、のちに過料の対象になる可能性もあります。

どのような財産があったかわからない、という

登記が不要なケース(例外)

一方で、次のようにすでに名義変更がされている場合や、借地権等には相続登記の義務は発生しません。

相続登記が不要な例
  • 遺言書に基づく「遺贈」で、すでに登記が済んでいる場合
  • 相続ではなく、生前に名義変更(贈与・売買)が終わっている場合
終活ナビ子

上記の通り、「登記しなくていいケース」というのは「そもそもすでに名義変更されている」場合です。
基本的には全ての不動産(家・宅地・収益物件・田畑や山林・原野など)が対象になります。

共有名義の土地は要注意

特に注意したいのが、共有名義のままになっている土地や家です。
相続を重ねると、名義人がどんどん増えていき、「誰の許可があれば登記できるのか」「誰が相続したのか」が分からなくなりやすいのです。このような場合は、早めに登記簿の整理し、共有解消に向けて話し合いをするべきです。

終活ナビ子

祖父母の代で兄弟が共有にしていた土地を、子の世代がさらに相続していくうちに、名義人が何十人にもなり、 売却も建て替えもできず、「負動産化」するケースもあります。

相続登記の手続きに必要なもの

相続登記を自分で行うにしても、司法書士に依頼するにしても、まず大切なのは必要な書類をそろえることです。
必要書類が一枚足りないだけでも、手続きの完了が後ろ倒しになってしまいます。

登記に必要な主な書類一覧

下記に挙げた書類の取得は、手続きを司法書士にお願いすることで依頼することはできますが、印鑑登録証明書のように、ご自身でしか取得できないものもあるのでご注意ください。

相続登記に共通して必要な書類
  • 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本一式(出生から死亡まで)
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑登録証明書※注
  • 遺産分割協議書(相続人全員の実印押印が必要)※注
  • 登記する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 固定資産評価証明書(市区町村役場で取得)

※注:遺言に基づいて相続手続きを行う場合は、遺産分割協議書・相続人全員の印鑑登録証明書と実印は不要です。

銀行手続きや相続税申告など、必要書類全般については、以下の記事もご参考にしてみてください。

相続登記の手続きの流れ

基本的な流れは、次の5ステップです。

相続登記の基本5ステップ
  1. 相続人を確定する(戸籍を集めて法定相続人を確認)
  2. 相続財産(不動産)を調べる(登記簿謄本を取得)
  3. 遺産分割協議を行う(誰がどの不動産を相続するかを決定)
  4. 必要書類をそろえる
  5. 法務局へ登記申請する

申請は、対象となる不動産の所在地を管轄する法務局で行います。

手続きにかかる費用の目安

登記では登録免許税がかかります。相続登記の場合、固定資産税評価額に0.4%をかけた金額が目安です。

💡ポイント:相続登記の登録免許税は0.4%
例)評価額2,000万円の土地を相続登記する場合
→ 2,000万円 × 0.004 = 8万円

司法書士に依頼する場合は、報酬は5万円〜10万円前後(不動産の数や相続の内容によっても変動)かかります。

💬 自分でやるか、専門家に頼むかの目安
  • 不動産が1件だけで、相続人が少ない → 自力でも可能な場合あり
  • 相続人が多い・共有名義・相続関係が複雑 ・対象の不動産が遠方→ 司法書士に依頼がおすすめ

法務局・市役所でできるサポートも活用を

最近では、各地の法務局に「登記相談窓口」が設けられており、必要書類や手続き方法を無料で教えてもらえます。
また、役所の窓口でも「無料相談会」などを実施していることがあります。まずは予約を入れて話を聞いてみるのも良いでしょう。

相続登記をスムーズに進めたい方へ

書類の準備や法務局手続きに不安があるときは、司法書士による無料相談サービスを活用してみましょう。
特に数次相続(相続人が亡くなった後、遺産分割協議が完了する前に相続人のうち一人がさらに亡くなり、次の相続が発生している状況)が発生している場合、対象の不動産が遠方にある場合などは、専門家にお願いしたほうが断然早くて安心というケースも多いです。

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